ゼロから始める基礎解剖学 各論編第2回 上肢の解剖学

解剖学
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セラピストを目指す人のために、基礎的な解剖学の知識を解説する「ゼロから始める基礎解剖学」。

前回は「下肢の解剖学」を取り上げました。

今回各論編の2回目は、「上肢の解剖学」について解説します。

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上肢前面の解剖学

ここからは、上肢前面の部分について解説します。

上肢前面の骨

上肢の骨の構造(前面)

上肢の骨は、

  • 肩甲骨
  • 上腕骨
  • 橈骨
  • 尺骨
  • 手の骨

から構成されます。(手の骨については別項目で解説します)

肩甲骨、上腕骨、橈骨、尺骨、これらの名称と位置は常識として覚えておく必要があります。

前腕の骨は親指側が橈骨小指側が尺骨となります。

臨床上、最低限触知が必要な部分は

  • 肩鎖関節
  • 烏口突起
  • 結節間溝(大結節と小結節の間)
  • 内側上顆と外側上顆

です。これらは触知できるようにしておきましょう。

上肢前面の筋

上肢前面の筋肉

上腕全面の筋で重要なのは、三角筋上腕二頭筋です。どちらも触知できるようにしてください。

上腕二頭筋は橈骨に停止していることも覚えておくと良いでしょう。

また長頭腱は上腕骨の結節間溝を通過しています。
この部分の摩擦で炎症を起こし、上腕二頭筋長頭腱炎となることがあります。ここは臨床上でも大切な部分です。

前腕には数多くの筋があります。たくさん知っているほど臨床では役立ちますが、まずは腕撓骨筋を覚えて下さい。

起始停止支配神経作用
三角筋肩甲骨の肩峰・肩甲棘・鎖骨の外側1/3三角筋粗面腋窩神経肩関節の外転(側方挙上)、屈曲(前方挙上)、伸展(後方挙上)
上腕二頭筋長頭:関節上結節
短頭:烏口突起
橈骨粗面筋皮神経肘関節の屈曲・前腕の回外
上腕筋上腕骨前面の下半部尺骨粗面肘関節の屈曲
腕橈骨筋上腕骨下部外側縁橈骨茎状突起橈骨神経肘関節の屈曲

上肢後面の解剖学

ここからは上肢後面について解説します。

上肢後面の骨

上肢後面の骨

上肢前面と同様なので、ここでは骨の名称などの説明は割愛します。

肘関節における、尺骨と橈骨、上腕骨の形状に注目してみて下さい。

尺骨と上腕骨は腕尺関節橈骨と上腕骨は腕橈関節を形成します。
尺骨と橈骨は上橈尺関節を形成します。
肘関節はこれら3つが合わさった複関節となります。

関節の形状による分類では、腕尺関節が蝶番関節腕橈関節が球関節上橈尺関節は車軸関節に分類されます。

上肢後面の筋

上腕後面の筋肉

上肢後面で大切な筋は、上腕三角筋です。まずはこの筋肉を覚えましょう。
長頭は肩甲骨(関節下結節)、内・外側頭は上腕骨体から起始している点もポイントです。

その他、前腕後面にも数多くの筋が存在します。
基礎編としては取り上げませんが、手指の伸展、手関節の背屈などを担う筋が多数ありますす。

起始停止支配神経作用
上腕三頭筋長頭:関節下結節
外側頭:上腕骨外側面
内側頭:上腕骨後面
肘頭橈骨神経肘関節の伸展
肘筋外側上顆尺骨上部後面

手の解剖学

ここからは手について解説します。

手の骨

手の骨

手の骨(上図)の名称についてはすべて覚えましょう

手根骨の名称と位置関係については、ビギナーのうちは臨床上あまり関係ないかもしれませんが、少しずつ覚えていきたいところです。

中手骨から遠位にかけての骨の配列は

  • 第1指が、中手骨→基節骨→末節骨 であるのに対して
  • 第2~5指が、中手骨→基節骨→中節骨→末節骨 となります。

つまり、第1指だけ中節骨がありません。これも覚えておきましょう。
(上図は「中節骨」の記載が抜けています)

手の関節について

手の関節のうち以下の関節については略称を用いることがよくあります。
これらについては、全てセラピストの常識として覚えておく必要があります。

  • MP関節:第1~第5指の中手骨と基節骨との間の関節(中手指節関節)
  • PIP関節:第2~第5指の基節骨と中節骨との間の関節(近位指節間関節)
  • DIP関節:第2~第5指の中節骨と末節骨との間の関節(遠位指節間関節)
  • CM関節:第1中手骨と大菱形骨との間の関節(第1手根中手骨関節)
  • IP関節:第1指の指節間関節

自分の手を使って、各関節の略称を覚えましょう。

スナッフボックスについて

スナッフボックス

スナッフボックスとは母指を外転させた際に手関節背側・橈側付近にできるくぼみのことを指します。「解剖学的嗅ぎタバコ入れ」とも呼ばれます。

画像のように、長母指伸筋腱長母指外転筋腱・短母指伸筋腱が触知できます。
また、くぼみの部分では舟状骨が触知できます。

いわゆる手首の腱鞘炎は、長母指外転筋腱・短母指伸筋腱に好発し、ドケルバン病と称されます。

手の筋

人間の手の巧緻性を裏付けするように、手には数多くの筋肉が付着しています。

いきなり全てを覚えるのは難しいとは思いますが、少しずつ知っていることを増やす努力をして欲しいと思います

ここではまず手始めとして、先程のスナッフボックスで挙げた、長母指外転筋短母指伸筋について触れておきます。

起始停止支配神経作用
長母指外転筋橈骨および尺骨体背面・前腕骨間膜第1中手骨底橈骨神経母指の外転
手根の撓屈
短母指伸筋橈骨体下部背面
前腕骨間膜
母指基節骨底母指基節の伸展・外転
手根の撓屈

まとめ

今回は上肢の解剖について見てきました。

整体師になりたての頃は、体幹や下肢に比べると、上肢を念入りに施術するということはあまりないかもしれません。

しかしながら、上肢をしっかり施術できるようになると、臨床で対応できる幅がとても広がると、個人的には思っています。

また、肩関節周囲はもちろんですが、肘関節や手首・指の不調も臨床上では多く見られます。
こういった事例に対処するためにも上肢の解剖の知識は役立ちます。

細かい部分が覚えにくい部分ではありますが、経験を積みながら少しづつ知識を増やすように心がけましょう。

各論編の次回は「体幹の解剖学」について解説します。

 

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