セラピストを目指す人のために、基礎的な解剖学を解説する「ゼロから始める基礎解剖学」。
今回は「足部の解剖学」を取り上げます。
人間が直立二足歩行をしていることもあり、足部の施術は色々と応用の効く部分となります。
また直立二足歩行をしているがゆえにクライアントの健康上のトラブルが多い部分でもあります。
なお前回は「頚部・頭部の解剖学」を取り上げました。
こちらもぜひご覧ください。
足部の解剖学
では早速、足部の解剖学について見ていきます。
足部の骨と構造
まずは足部の骨の名称と、関節の構造、足のアーチについてです。
足の骨
足部の骨の名称と配列はすべて覚えておく必要があります。
特に足根骨を構成する7個の骨の位置関係については理解しておきましょう。
<足根骨>
距骨 踵骨 舟状骨 内側楔状骨 中間楔状骨 外側楔状骨 立方骨
足関節の構造
足関節の形状については、特に脛骨の内果と距骨の位置関係、腓骨の外果と距骨の位置関係をよく見ておいてください。
上図に挙げられている足関節部の名称については、整体師は常識として知っておかなければなりません。
PIP関節とDIP関節のどちらが末端側か、リスフラン関節とショパール関節の位置はどこかということは理解しておきましょう。
<リスフラン関節>
足根中足関節とも呼ばれる。足根骨遠位列(内側・中間・外側楔状骨、立方骨)と第1~5中足骨底で作られる関節
<ショパール関節>
横足根関節とも呼ばれる。距骨・踵骨と舟状骨・立方骨の間の関節。
足のアーチについて
足の骨は靭帯によって補強されており、全体として弓なりの形状を構成しています。(上図参照)
このうち、縦方向の弓を縦足弓(いわゆる縦アーチ)と呼びます。
縦アーチは内側半(内側縦アーチ)と外側半(外側縦アーチ)に分類されています。
内側半は、踵骨-距骨-舟状骨-楔状骨-第1~3中足骨を連ねる列で構成されています。
外側半は、踵骨-立方骨-第4・5中足骨を連ねる列で構成されています。
また、遠位列の足根骨は横に凸の形状を構成しており、これを横足弓(いわゆる横アーチ)と呼びます。
これら縦足弓と横足弓によって足底にはドーム状の空間ができており、これが「土踏まず」と呼ばれる部分となります。
足関節の靭帯
足関節の外側には臨床上重要な靭帯があります。
距骨と脛骨・腓骨から構成される距腿関節の外側を補強する靭帯であり、前距腓靭帯・後距腓靭帯・踵腓靭帯の3つがあります。
このうち前距腓靭帯は足関節の内反捻挫でもっとも損傷しやすい部分であることを知っておきましょう。
ちなみに足関節の内側には三角靱帯という靭帯があります。こちらも解剖学書などで形状を見ておくと良いでしょう。
足部の筋

足底の筋
(グレイ解剖学から引用)
手と同様、足部も数多くの筋肉が付着する部位となります。
その中でもまずは、足底腱膜を知っておきましょう。足底腱膜は時に炎症を伴い、「足底腱膜炎」という疾患を起こすことがあります。
その他の筋肉については、経験に応じて少しずつ知識を増やしていくように努めましょう。
最後に
ゼロから始める基礎解剖学。各論編の5回目は「足部の解剖学」について見てきました。
そして総論編4回、各論編5回で取り上げてきたこのシリーズも、今回で最後となります。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。
本シリーズでは全くの専門外の方が整体師・セラピストを目指すにあたり、まず知っておくべきと思われる項目を記載してきました。
逆に言えば、セラピストとしてデビューするにあたっての必要最低限の知識しか載っていません。
技術のレベルや精度を上げたいと思うならば、筋骨格系のさらなる知識が必要となります。
クライアントの多様な症状や相談に対応したいと思うならば、筋骨格系以外にも、中枢神経系や内臓系、ホルモンなどの内分泌系の解剖知識および生理学的知識なども必要になってきます。
すべてのセラピストにとって解剖学は基本となる学問であり、そのレベルに応じて生涯学び続けねばならない学問となります。
日々の臨床の中であやふやに思ったこと、疑問に感じたことなどを常に調べ、少しずつ知識を増やしていくことをこれからも心がけてください。
約20年前、鍼灸専門学校で筆者が初めて解剖学を学んだ際の講師であった児玉譲次先生(当時北大医学部名誉教授。平成30年ご逝去)。その児玉先生の座右の銘を紹介して終わりにしたいと思います。
Sempre Avanti!
(イタリア語で「絶えず前進せよ!」の意)