整体師を目指す人のために、基礎的な解剖学の知識を解説する「ゼロから始める基礎解剖学」。
各論編の4回目は「頚部・頭部の解剖学」を取り上げます。
首や肩のこりの施術をはじめとして、頚部はビギナーの整体師でもよく触れることになる部分です。
頭蓋骨や顔面は、施術できるようになると、色々と対処の幅を広げることのできる部分でもあります。
前回は「体幹の解剖学」を取り上げています。
ぜひこちらもご覧ください。
頚部
まずは頚部について見ていきます。
頚部の骨
頚椎は7個の骨から構成されます。
C1、C2は他の頚椎と基本的形状が異なります。
C1は環椎、C2は軸椎と呼ばれ他とは異なる形状をしています。(下図参照)

環椎(側面)

環椎(上面)

軸椎(側面)

軸椎(上面)
次に、頚部の施術の際に近隣近隣部分となるところである、頭蓋骨後面について見てみます。
上の図は頭蓋骨を後方から見たものとなります。クライアントが伏臥位で寝た際の頭蓋骨の位置関係に相当します。
後頭骨、側頭骨、頭頂骨の位置については理解しておきましょう。
また、上図には記載がありませんが、外後頭隆起、上項線、乳様突起についてはその位置を解剖学書などで確認し、触知できるようにしておきましょう。
頚部の筋
頚椎後面には脊柱起立筋の一部である頸最長筋・頭最長筋が存在します。
また、頚部で重要な筋肉としては、僧帽筋上部線維、胸鎖乳突筋、板状筋(頭板状筋・頚板状筋)、肩甲挙筋があります。
特に胸鎖乳突筋と肩甲挙筋については走行を理解するとともに触知できるようにしましょう。
起始 | 停止 | 支配神経 | 作用 | |
---|---|---|---|---|
胸鎖乳突筋 | 鎖骨頭:鎖骨内側1/3部 胸骨頭:胸骨柄上部 | 乳様突起、後頭骨上項線外側部 | 副神経 | 一側が働くとその反対側にオトガイを回す 両側が働くと頭を後屈 前部繊維が両側働くと頭を前屈する |
頭板状筋 | 下位5頚椎の高さの項靭帯、上位2~3胸椎棘突起 | 乳様突起、後頭骨上項線外側1/3 | 脊髄神経後枝 C2~C8 | 頭部背屈・側屈 |
頚板状筋 | 第3または4~6胸椎棘突起 | 上位2または3頚椎横突起 | 同上 | 同上 |
肩甲挙筋 | 第1~4頚椎横突起 | 肩甲骨上角 | 肩甲背神経 | 肩甲骨を上内方に引く |
(グレイ解剖学の引用図を改変)
また、その他にも頚部で重要な筋肉としては、後頭下筋群(上図)があります。
後頭下筋郡は次の4筋からなります。
- 大後頭直筋(軸椎棘突起と後頭骨間)
- 小後頭直筋(環椎後結節と後頭骨間)
- 上頭斜筋(環椎横突起と後頭骨間)
- 下頭斜筋(軸椎棘突起と環椎横突起間)
全体の作用としては頭を後屈し直立位を保つ働きをします。一側のみが働くときは側屈・回旋をします。
眼球運動に伴う頭部の鋭敏かつ微妙な運動を行う筋肉とされています。
いずれも項部の最深層にある筋であり、直接触れることはできませんが、臨床上大切な筋ですので覚えておきましょう。
頭部
つぎに頭部をみていきます。
頭部の骨
頭蓋骨は15種23個の骨から構成されています。
頭蓋や顔面については、セラピストによって施術するケースとしないケースがあり、ほとんど触れないセラピストもいます。
しかしながらセラピストの基礎知識として、表面から触れることのできる骨については名称と位置を理解しておくほうが望ましいと思います。
具体的には、前頭骨、頭頂骨、後頭骨、側頭骨は当然のこと、頬骨、上顎骨、下顎骨、そして鼻骨と蝶形骨の位置については理解しておくとともに、触知できるようにしたいところです。
また、縫合については、鱗状縫合、ラムダ縫合についてはその位置を理解しておきましょう。(その他も必要に応じて少しずつ覚えていきましょう。)
頭部の筋
頭部で重要な筋肉としては、側頭筋、咬筋、帽状腱膜があります。
その他にも、頭部には表情筋・咀嚼筋と総称される数多くの筋があります。
また、下顎下面にも前頚筋と総称される筋もあります。
ここでは、全てを取り上げることはしませんが、経験を積んでいく中で少しずつ知識を増やしていきたいところです。
起始 | 停止 | 支配神経 | 作用 | |
---|---|---|---|---|
咬筋 | 頬骨弓 | 下顎骨咬筋粗面 | 下顎神経 | 下顎骨の挙上 |
側頭筋 | 側頭骨側頭鱗 | 下顎骨筋突起 | 同上 | 下顎骨の挙上、 後方移動 |
まとめ
今回は頚部と頭部の解剖学についてみてきました。
最初にも述べましたが、頚部はビギナーの頃から欠かせない施術部位であり、頭蓋骨・顔面は技術のステップアップに役立つ部分です。
ここでは覚えておくべき基礎的な部分をピックアップして載せています。少しずつでも良いので知識をものにしていって下さい。
次回は「足部の解剖学」について解説します。